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人事院は9月30日(火)、国会と内閣に対して国家公務員の給与等に関する2011年度人事院勧告及び報告を行いました。
勧告は、月例給を3年連続でマイナス(月例給889円の引き下げ)する内容となっています。
今回の引き下げ勧告は地方公務員など「公務員」関係労働者650万人の生活に深刻な影響を及ぼすことになります。同時に、日本の労働者の賃金の社会的規範とも言える公務員賃金を引き下げることにより、全ての労働者の賃金切り下げに連動していくことになります。現に、1997年以降労働者の賃金は下がり続けています。
この影響から、日本経済に深刻な問題を投げかけている、18年間続いているデフレを克服することが出来ず、景気や地域経済はさらに停滞し、日本経済をさらに委縮させることになります。
今こそ、働く者の賃金をはじめとする生活改善に向けた取り組みを現場からつくり上げていくことが求められていると言えます。 |
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T.給与勧告の骨子 |
○ 本年の給与勧告のポイント
月例給は引き下げ改定、ボーナスは改定見送り〜平均年間給与は△1.5万円(△0.23%) |
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@東日本大震災のため民間給与実態調査は2か月遅れで、岩手県、宮城県及び福島県を除く44都道府県で実施
- 月例給については、地域手当の級地区分を単位とした官民比較を行っているため、東北3県の影響は限定的
- 期末・勤勉手当(ボーナス)は、岩手県、宮城県及び福島県について調査していない中で、国家公務員の特別給の改定を行うべきと判断するに至らず、改定を見送り
A国家公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(△0.23%)を解消するため、50歳台を中心に40歳台以上を念頭に置いた俸給表の引き下げ改定
B給与構造改革における経過措置額は、平成24年度は2分の1(上限1万円)を減額し、平成25年4月1日に廃止。(これにより生ずる原資を用い、若年・中堅層を中心に、給与構造改革実施のために抑制されてきた昇給を回復) |
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○ 給与勧告の基本的考え方 |
- 国家公務員給与は、社会一般の情勢に適応するように国会が随時変更することができる。その変更に関し必要な報告・勧告を行うことは、国家公務員法に定められた人事院の責務
- 勧告は、労働基本権制約の代償措置として、国家公務員に対し、適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤
- 国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、勧告に当たっては、経済・雇用情勢等を反映して労使交渉によって決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的
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U.定年を段階的に65歳に引き上げるための |
国家公務員法等の改正についての意見の申出の骨子 |
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○国家公務員制度改革基本法の規定を踏まえ、公的年金の支給開始年齢の引き上げに合わせて、平成25年度から平成37年度に向けて、定年を段階的に65歳まで引き上げることが適当
○民間企業の高齢期雇用の実情を考慮し、60歳超の職員の年間給与を60歳前の70%水準に設定
○能力・実績に基づく人事管理の徹底、当面役職定年制の導入により組織活力を維持
○短時間勤務制の導入や節目節目での意向聴取等を通じ、60歳超の多様な働き方を実現 |
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1 検討の背景 |
- 公的年金の支給開始年齢が、平成25年度以降段階的に60歳から65歳へと引き上げられることに伴い、現行の60歳定年制度のままでは無収入となる期間が発生。雇用と年金の接続は官民共通の課題
- 既に民間企業では、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律において、65歳までの雇用確保措置を義務付け
- 公務についても、国家公務員制度改革基本法第10条に、雇用と年金の接続の重要性に留意して定年を段階的に65歳に引き上げることについて検討することと規定
- 人事院として、平成19年から「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」(座長:清家篤慶應義塾長)を開催。平成21年7月の最終報告を踏まえ、制度と運用の見直し方策を検討
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2 段階的な定年の引き上げの必要性 |
- 民間企業における60歳定年到達者の再雇用の運用状況をみると、非管理職層を中心に、多くの者が実際に継続雇用され、また、定年前の仕事内容を継続する形が多くなっている
- 政策の立案や行政事務の執行等の業務が主体である公務における再任用は、定年前より職責が低い係長・主任級の短時間勤務のポストで、補完的な職務に従事させることが一般的。今後、再任用希望者の大幅な増加が見込まれ、こうした再任用では、希望者全員を65歳まで雇用する仕組みとして十分機能することは困難
- 定年の引き上げにより対応する場合、雇用と年金の接続が確実に図られるほか、採用から退職までの人事管理の一体性・連続性が確保され、また、職員の意欲と能力に応じた配置・処遇も可能
- 民間企業での取り組みに留意し、60歳以降の給与の抑制、組織活力維持のための方策等を講じながら段階的に定年を引き上げることで、来るべき本格的な高齢社会において公務能率を確保しながら職員の能力を十分活用していくことが適当
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3 段階的な定年の引き上げのための具体的措置 |
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(1)段階的な定年の引き上げ |
- 平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ、平成37年度に65歳定年とする
- 段階的な定年の引き上げ期間中は、定年退職後、年金が満額支給される65歳までの間について、再任用制度の活用の拡大を通じて65歳までの雇用を確保
- 60歳以降の働き方等についての人事当局による意向聴取を通じ、多様な働き方を実現
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(2)60歳を超える職員の給与制度の設計―年間給与は60歳前の70% |
- 国家公務員給与は社会一般の情勢に適応するように変更することとされ、また、俸給は職務と責任に応じて職務の級が設定され、同一の職務の級の中でも一定の幅を持って水準が設定
- 定年の引き上げに当たり、60歳前後で同じ職務を行う場合であっても、同一の職務の級を適用した上で、各職務の級における所定の俸給の幅も考慮しつつ、60歳台前半層の民間企業従業員の年間所得等を踏まえて60歳前より低い水準に設定することは、職務給の考え方とも整合
- 60歳台前半層の民間企業従業員(製造業(管理・事務・技術))の年間所得(給与、在職老齢年金、高年齢雇用継続基本給付金)が60歳前の年間給与の約70%(企業規模100人以上535万円/787万円=68.0%、同10人以上509万円/719万円=70.8%)であることを踏まえ、60歳を超える職員の年間給与について、60歳に達した日の属する年度の翌年度から、60歳前の70%に設定
- 具体的には、俸給月額の水準を一定程度確保(60歳前の73%)することとし、その分ボーナス(特別給)の年間支給月数を60歳前の職員に比べて引き下げ(年間3.00月分)
- 60歳を超える職員は昇給しない。諸手当は基本的に60歳前と同様の手当を支給
- 医療職(一)等は、60歳以降も現在と同様の給与制度を適用
- 60歳を超えた特例定年が適用されている職員(行政職(二)労務職員等)の給与も引き下げるが、これまで60歳超の定年に達するまで、給与の引き下げがなかったことを考慮し、一定の経過措置
- 定年の引き上げを行っても、総人員及び級別の人員を増加させないことを前提とすれば、総給与費は減少
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(3)組織活力の維持のための方策 |
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@ 役職定年制の導入 |
- 管理職の新陳代謝を図り組織活力を維持するため、能力・実績に基づく人事管理が徹底されるまでの間の当分の間の措置として、本府省の局長、部長、課長等の一定の範囲の管理職が現行の定年である60歳に達した場合に他の官職に異動させることとする役職定年制を導入
- 60歳に達した日後における最初の4月1日までに他の官職に異動。特別な事情がある場合、例外的に引き続き官職に留まれるよう措置
- 役職定年により異動した職員の俸給は、役職定年による異動前に受けていた号給の俸給月額の73%とする。ただし、その額は異動後にその者が属する職務の級の最高号俸を超えないものとする
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A 短時間勤務制の導入 |
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60歳を超える職員の多様な働き方を実現するため、短時間勤務を希望する職員を短時間勤務ポストに異動させることを可能とし、これにより若年・中堅層の採用・昇進機会を確保 |
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B 能力・実績に基づく人事管理の徹底と職員のキャリア支援 |
- 職員の能力・業績の的確な把握、短時間で頻繁に異動させる人事運用の見直し、年次的な昇進管理の打破等、能力・実績に基づく人事管理を徹底。また、職員の専門性を強化
- 節目節目で職員の将来のキャリアプランに関する意向を聴取し、職員の能力を伸ばし多様な経験を付与する機会を拡充する措置を講ずる必要
- 各府省の行政運営の実情に応じ、スタッフ職が政策立案に必要な役割を果たし得るような行政事務の執行体制を構築
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※ 上記の施策は、平成25年度以降の段階的な定年の引き上げ期間中の制度の運用状況や民間企業の動向も踏まえつつ、諸制度及び人事管理の運用を随時見直していく必要。役職定年制については、人事管理の見直しの状況等を踏まえて、必要な検討を行う |
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4 定年の引き上げを円滑に行うため公務全体で取り組むべき施策 |
- 公務内外で職員の能力・経験を活用する観点から、専門スタッフ職等の整備、人事交流機会の拡充を図るとともに、自発的な早期退職を支援する退職手当上の措置、定年引き上げ期間中も安定的な新規採用を可能とするための定員上の経過措置等を講ずることについて、政府全体での検討が必要
- 加齢に伴う身体機能の低下が職務遂行に支障を来すおそれがある職務に従事する職員の定年の引き上げに関し、その職務の特殊性を踏まえた条件整備や所要の措置の検討が必要
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V.国家公務員制度改革に関する報告の骨子 |
T 国家公務員制度改革の前提となる基本認識
国家公務員制度改革は、民間と異なる国家行政や国家公務員の労使関係の特徴を関係者の共通認識としつつ、議論を尽くし、国民の十分な理解と納得を得て進めるべきことを指摘 |
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1 国家行政の特徴と国家公務員の在り方 |
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@具体的な行政組織、行政の果たすべき任務等は、法律や予算に基づき、国会の民主的コントロールの下に置かれていること
A大臣等と国家公務員との関係は、いわば車の両輪とも言える関係にあり、適切な役割分担と連携が求められること |
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2 国家公務員の労使関係の特徴 |
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(1)大臣等の使用者としての権能は国会の民主的コントロールを受ける
勤務条件法定主義、財政民主主義の原則により国会の民主的コントロールを受け、国家公務員の給与等勤務条件は直接の使用者である内閣総理大臣や各省大臣等の決定だけでは完結しないという構造的な特徴が存在
(2)国家公務員には国民全体の奉仕者としての職務遂行が求められる
国家公務員は、国民全体の奉仕者として、大臣等と一体となり全力で国民のために職務を遂行することが求められること
(3)公務における勤務条件決定には利潤の配分や市場の抑制力という内在的制約が存在しない
公務における勤務条件決定では、民間企業の賃金決定における利潤の分配といった枠組みが当てはまらず、また、基本的には倒産などの市場の抑制力という内在的抑制が欠如 |
U 国家公務員制度改革関連法案に関する論点 |
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1 人事行政の公正の確保に関する論点
人事行政の公正を確保する機能を制度的に確保するため、更に次の措置が必要 |
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(1)採用試験及び研修の公正な実施の確保
採用試験の出題や合否判定等については、組織的に一定の独立性を有する第三者機関が行うことが必要。また、職員の研修についても、公正な計画・実施のための措置が重要
(2)幹部職員人事の公正確保
幹部職員の適格性審査に人事公正委員会が適切・実効的に関与することが重要。また、幹部職間の転任には、適性の厳正な検証や異動の合理性・納得性を高めるための措置が必要 |
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2 協約締結権付与に関する論点
改めて労働基本権制約の見直しに関する基本的な論点を整理 |
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(1)協約締結権付与の必要性と国民の利害・得失の明確化
現行制度の問題や国民にとっての具体的利害・得失等が明らかにされる必要
(2)勤務条件に対する民主的コントロールと当事者能力の確保
勤務条件についての国会の民主的コントロールという憲法上の要請と、内閣の使用者としての当事者能力の確保との間の整合性をどう図るのか適切な制度設計を行う必要
(3)複数の労働組合との交渉を通じた勤務条件の決定等
一部の組合に対する仲裁裁定と他の組合との協約の関係を整理する必要。また、非組合員の勤務条件をどう決定するのか整理する必要
(4)具体的な労使交渉の在り方
予算の事前調整・民間の給与実態の把握、配分交渉の方法、各府省における労使交渉の体制整備について詰める必要
(5)仲裁裁定の実効性の確保
法案では仲裁裁定は内閣に対する努力義務とされているが、その実施は最大限確保される必要
(6)引き続き労働基本権が制約される職員の代償措置
警察職員等の労働基本権制約に対する代償措置の確保が必要 |
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V 国家公務員制度改革基本法に定める課題等についての取組 |
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1 能力・実績に基づく人事管理の推進 |
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能力・実績に基づく人事管理の推進のため、採用試験の再編、体系的人材育成、ポスト在任期間の確保、競争的かつ公正な選抜手続の整備等に取り組む。人事評価制度の適切な運用を支援 |
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2 職員の勤務環境の整備 |
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男性の育児休業取得促進の一助として短期間の取得者の期末手当の支給割合を見直し。超過勤務縮減のための政府全体としての取り組みや東日本大震災の惨事ストレス対応を含めた心の健康づくり対策を推進 |
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