人事院は、8月10日(火)、国会と内閣に対して国家公務員の給与等に関する2010年度人事院勧告及び報告を行いました。
勧告は、月例給・ボーナスともに2年連続のマイナス(年平均94,000円の引き下げ)となっており、地方公務員等全国800万人にのぼる公務員関係労働者の生活に深刻な影響を与えることになります。
加えて、日本の労働者の社会的規範ともいえる公務員賃金を切り下げることにより、全ての労働者の賃金切り下げに連動していくことになります。
そのことにより、景気や地域経済はさらに停滞し、結果として日本経済を委縮させることになります。
とりわけ「公務員が多すぎる」「民間と比べて働かない」「賃金が高すぎる」とする最近の公務員バッシングは常軌を逸しています。
このようなことがまことしやかに進められると、公務員の労働条件をワーキングプアに近づけることが格差是正の一方途であるかのような世論が作りかねられません。
今こそ、働く者の賃金をはじめとする生活改善に向けた「官・民一体の取り組み」を本格的に構築していくことが求められていると言えます。
T.本年の給与勧告のポイント
月例給、ボーナスともに引き下げ
〜平均年間給与はΔ9.4万円(Δ1.5%)
(月例給については、50歳台後半層を重点的に引下げ)
@公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(Δ0.19%)を解消するため、
月例給の引下げ改定
−55歳を超える職員の俸給・俸給の特別調整額の支給額の一定率減額、
俸給表の引下げ改定
A期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(Δ0.2月分)
U.定年延長に向けた制度見直しの骨格
(1)定年延長と60歳台の多様な働き方
- 平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ
- 高齢期の働き方に関する職員の意向を聴取する取り組みを導入
- 一定範囲の管理職を対象とした役職定年制の導入
- 定年前の短時間勤務制や人事交流の機会の拡充
(2)定年延長に伴う給与制度の見直し
60歳台前半の民間給与が、継続雇用制度を中心とした雇用形態の下で
60歳前に比べて3割程度低くなっている実情等を踏まえ、職務と責任に
応じた給与を基本としつつ、60歳台前半の給与水準を相当程度引下げ。
50歳台の給与のあり方についても必要な見直しを検討。
(3)その他関連する措置
加齢に伴い就労が厳しくなる職種の取扱い、特例的な定年の取扱い等を検討
V.公務員人事管理
公務員の労働基本権問題の議論に向けて
労働基本権制約の見直しは、その目的を明確にし、便益・費用等を含め、全体像を提示し、広く議論を尽くして、国民の理解の下に成案を固め、実施することが必要
- 公務における労働基本権問題の基本的枠組みと特徴
公務における労働基本権問題の検討は、公務特有の基本的枠組み(内閣と国家公務員は双方が国民に対し行政執行の責務を負うとともに、労使関係にたつという二つの側面を有する)と特徴(市場の抑制力が欠如している等民間と大きく相違)を十分踏まえて行う必要。
- 自律的労使関係制度の在り方 〜基本権制約の程度等に応じたパターン
パターン1 協約締結権及び争議権を付与。予算等の制約は存在。
パターン2 協約締結権を付与し争議権は認めない。
この場合は代償措置(仲裁制度)が必要。
パターン3 協約締結権及び争議権は認めずその代償措置として第三者機関の
勧告制度を設けるとともに、勤務条件決定の各過程における職員団体の参加の仕組みを新たに制度化。
パターン4 職位、職務内容、職種等に応じてパターン1〜3を適用。
- 自律的労使関係制度の在り方を議論する際の論点
・国会の関与(法律・予算)と当事者能力の確保
・付与する職員の範囲
・労使交渉事項と協約事項の範囲
・給与水準の決定原則や考慮要素
・交渉当局の体制整備
・職員団体の代表性の確保
- 検討の進め方
基本的な議論を深めて見直しの基本的方向を定め、制度設計に向けて各論点を十分に詰めた上で、便益・費用を含む全体像を国民に示し理解を得て、広く議論を尽くして結論を得る必要。
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